2025年セレクトセールの落札額2億円以上の馬の母系(その2)

今回は前回の (その1) に続き、今年のセレクトセールの当歳セッションにおける落札額2億円以上馬の母系を解説します。 該当の18頭は全て牡馬です。

@ミッドナイトビズーの2025

イクイノックスの初年度産駒がいきなり5億8千万円です。生まれて4か月余りの幼い馬にこのような値が付くこと自体、常識では計り知れません。 とりあえずその話は置いといて、母は こちら で、米国産でサンタアニタオークスを含むGIを5勝。 一昨年に書いた「ブラックタイドの父系」には、イクイノックスがこれだけの鳴り物入りでスタッドインとなると、 ディープインパクトと同じように当初から名牝ばかりが交配相手に選ばれるのでしょうと書きましたが、そのとおりの様相です。 血統構成は こちら のとおり、5代血統表レベルでは完全なアウトクロス。 「バイアスのかかった遺伝子プール(その13)」に書いたとおり、 イクイノックスが内国産牝馬を相手にした場合はサンデーサイレンスのインクロスのパターンばかりとなってしまうものの、 交配相手の多くは輸入牝馬であり、輸入牝馬相手の場合は日本で広まった血のインクロスにはなりづらく、この当歳馬および (その1) に書いた何頭かもその例でしょう。

Aシンプリーグロリアスの2025

当歳の落札額2番手(5億円)のこの馬は父がキタサンブラック。米国産の母は特別な競走成績はありませんが、愛国産の祖母は こちら の水色で、愛1000ギニーを含むGIを4勝。ご覧のとおり母のきょうだい(全て父は War Front)には2頭のGI馬がおり、 全姉の Roly Poly も全兄の U S Navy Flag もGIを3勝。 この馬も こちら のとおり、5代血統表レベルではアウトクロスです。

Bゴーイングトゥベガスの2025

3番手(4億5千万円)のこの馬の父はまたもイクイノックス。母は こちら で、米国産のGI2勝馬。 樹形図自体はご覧のとおり地味で、近くには近年のGI馬の名はありませんが、母が優秀であることに変わりはありません。 この馬も こちら のとおり、5代血統表レベルではアウトクロスです。

Cファイアバーンの2025

4番手(3億2千万円)のこの馬はキズナ産駒。 (その1) に列挙した馬でキズナ産駒は1頭のみでしたが、今回列挙する中でもこの馬だけです。 母は こちら で、豪州産のGI2勝馬。樹形図自体は派手さはありませんが、Bと同様に、母が優秀であることに変わりはありません。 この馬もこちら のとおり、5代血統表レベルではアウトクロスです。

Dグローバルビューティの2025

5番手(3億1千万円)のこの馬はまたまたイクイノックス産駒。母は こちら のアルゼンチン産のGI馬。 4代母ウイットワタースランドの仔にオークス馬のチョウカイキャロルがおり、この母系はいまも日本に残っています。 この馬もこちら のとおり、5代血統表レベルではアウトクロスです。

Eソーテルヌの2025

6番手(3億円)のこの馬は父 Frankel の持込で、母は こちら のフランス産GI馬。 (その1) の「Gサザンスターズの2024」のところで、その母ソーテルヌのことをすでに書いたように、ここは目が離せない母系です。 ところで、日本軽種馬協会の月刊機関誌『JBBA NEWS』には輸入繁殖牝馬のリストが掲載され、そこには飼養予定地が付記されています。 今年の1月号には昨年11月に日本に到着した牝馬群が掲載されており、ソーテルヌの飼養予定地は こちら のとおり「新ひだか町」とあったことから、社台ファームでもノーザンファームでもないようだなと思っていたのです。 今般の販売者名からグランド牧場とわかりました(関連記事は こちら)。 「柳の下にいつも泥鰌(どじょう)はいない」と言いますが、果たしてこの著名牝系「Sライン」からの新たな泥鰌となるでしょうか。 ちなみに、このような優れた牝系で優れた競走成績の牝馬の購買価格はどのくらいなのかとついつい思ってしまいます。初仔の3億円だけではまだまだペイしないでしょう。

Fサンカルパの2025

7番手(2億9千万円)のこの馬はスワーヴリチャード産駒。母はアルゼンチン産のGI馬で こちら であり、南米で繁栄している母系です。 この樹形図の下の方に名があるカリーナミアが昨年産んだ仔(父エピファネイア)は、「2024年セレクトセールの落札額3億円以上の馬の母系(その2)」の中のGであり、昨年の当歳セッションの落札額第2位です。 そこにも書きましたが、上記樹形図中の ★(7-3-1) に続く箇所は こちら であり、 下の方はアルゼンチンのGI馬が密集しており、バラダセールはサトノフラッグやサトノレイナスの母です。

Gシャムロックヒルの2025

8番手(2億6千万円)のこの馬はエピファネイア産駒で、内国産の母シャムロックヒルはGVマーメイドSの勝馬。 その母ララアが こちら の水色であり、米国産のGI馬。近くに昨年のケンタッキーダービー馬 Mystik Dan の名も見えます。

Hムーチョアンユージュアルの2025

同額8番手(2億6千万円)のこの馬はイクイノックス産駒の4番手。母は こちら で、米国産のGI馬。 縦に長く垂直状になっている樹形図はGI馬を多数出している系統であり、この母系もそうです。 この馬の近親というほどではないですが、上記樹形図で特筆に値するのは Kossanova という米国産の牝馬で、チリで4頭のGI馬を産んでおり、 さらに孫にも曽孫にもGI馬がいます。まあ、Kossanova の子孫のGI馬が多数いるために、本樹形図は垂直に近く見えてくるのかもしれません。 この当歳馬もこちら のとおり、5代血統表レベルではアウトクロスです。

落札額2億円以上の当歳馬はさらに9頭おり、これは次回にさせてください。

(2025年7月22日記)

「2025年セレクトセールの落札額2億円以上の馬の母系(その3)」に続く

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