2025年セレクトセールの落札額2億円以上の馬の母系(その1)

一昨年は「2023年セレクトセールの落札額3億円以上の馬の母系」を書き、 昨年は「2024年セレクトセールの落札額3億円以上の馬の母系 (その1) (その2)」を書きました。

今年のセレクトセールは一昨日、昨日と開催され、総売上額はこれまた更新して327億円とのこと。 一市民として、たったの2日間で動いたこの数字を見て虚しさにも包まれながら、頑張って今年も高額落札馬の母系を解説します。 なお、今年は落札額2億円以上まで解説範囲を広げ、今回は(その1)として1歳馬、次回の (その2) は当歳馬について書きます。 以下の各々にリンクを張った樹形図中の下線を付した馬は今世紀生まれのGI馬、太字は違う種牡馬を相手に複数のGI馬を産んだ牝馬です。

@モシーンの2024

まずは1歳の最高落札額(4億2千万円)の馬から。今年もキタサンブラック産駒は人気であり、 この馬に加えて以下のAおよびB、つまり1歳の落札額ベスト3はキタサンブラック産駒。 母は こちら で、豪州産のGI4勝馬。 半姉に東京新聞杯などを勝ったプリモシーン、半兄にプリンシパルSを勝ったダノンエアズロックがおり、馬体も身のこなしもよければ、 そこそこの値がつくはずでしたが、いずれにしても4億超という額が見合うのでしょうか。 ちなみに血統構成は こちら のとおり、5代血統表レベルでは完全なアウトクロスです。

Aノームコアの2024

1歳の落札額2番手(4億1千万円)も上に書いたとおりキタサンブラック産駒。 母はご存じの馬で、当然に叔母がクロノジェネシスということで、樹形図は こちら。ちなみに同じ母系ながらちょっと遠いのですが、 その樹形図の下に見える Delta Princess という米国産の牝馬はご覧のとおり3頭のGI馬を産んでおり、その3頭は全て違う父であり、偉大なる母です。

Bラビットランの2024

3番手(3億2千万円)も上に書いたとおりキタサンブラック産駒。母ラビットランは米国産で日本で走り、ローズSなどを勝ちました。 祖母(=ラビットランの母)は こちら の水色です。 とびきりの母系というわけではなく、ここまで落札額が吊り上がったのは、卓越した何かがあったのでしょうか。 血統構成は@と同様、こちら のとおり5代血統表レベルでは完全なアウトクロスです。

Cヤンキーローズの2024

4番手(3億1千万円)はリバティアイランドの半弟(父サートゥルナーリア)。母は こちら のとおりで、豪州産でGI2勝。 ふと、ヤンキーローズに交配した歴代種牡馬を見てみたら、こちら(JBISサーチ) のとおり全て違います。

Dコンヴィクションの2024

5番手(3億円)のこの馬も父はキタサンブラック。母は こちら のアルゼンチン産のGI馬。 ご存じ半兄は一昨年のセレクトセールの最高落札額馬(5億2千万円)で、現在デビュー待ちのサガルマータ(父コントレイル)です。

Eフォエヴァーダーリングの2024

同額5番手(3億円)のこの馬はレイデオロ産駒。米国産の母は こちら の黄色、つまりフォーエバーヤングの半弟で、 叔母の Heavenly Love はGI馬、そしてその仔もGIを2勝の Sierra Leone。もうお気づきかもしれませんが、 昨年のケンタッキーダービーは2着がこの Sierra Leone、3着がそのいとこのフォーエバーヤングでした。

Fパリスビキニの2024

7番手(2億8千万円)のこの馬はコントレイル産駒。母系はアーモンドアイなどがいる Best in Show の系統なのですが、 こちら のとおりGI馬が満員御礼状態であり、この馬の母の周囲をピックアップしたのが こちら です。 母パリスビキニは米国産でGI馬ではありませんが、半姉 Paris Lights がGI馬です。

Gサザンスターズの2024

8番手(2億7千万円)のこの馬もキタサンブラック産駒。この馬も こちら のとおり、 5代血統表レベルではアウトクロスです。英国産の母は こちら の黄色で、半姉はスターズオンアース。 この樹形図の周囲の名を見ると唸りますが、母サザンスターズの下にいるソーテルヌは「巨大な自転車操業(その4)」 でも触れたムーランドロンシャン賞の勝馬であり、「ソーテルヌの2025(父 Frankel)」は今年の当歳セッションの落札額6位(3億円)でした。 また、こちら に書いたとおり、昨年の当歳セッションの最高落札馬「セリエンホルデの2024」もこの母系であり、「Sライン」と呼ばれている著名牝系です。

Hメチャコルタの2024

9番手(2億6千万円)のこの馬はコントレイル産駒。5代血統表レベルでは こちら のとおりアウトクロス。 母は こちら の黄色で、アルゼンチン産のGI馬。母の伯父にもGI馬がいますが、とびきり派手な母系ではありません。 しかし母系樹形図を眺めていると、そんな地味な母系からGI馬が一旦出た場合に一気に繁栄するパターンがしばしばあります。

Iイスパニダの2024

10番手(2億5千万円)のこの馬の母は こちら で、アルゼンチンの1000ギニー(ポージャデポトランカス大賞)の勝馬。 父コントレイルに母アルゼンチン産GI馬ということではHと同じ。樹形図のとおり、イスパニダの全兄2頭もGI馬であり(父は全て Pure Prize)、 その母 Historia は3頭のGI馬を産んだのです。1頭の繁殖牝馬が生涯に産める仔の数はせいぜい10頭余りです。 確かにAで紹介した Delta Princess は全て違う種牡馬を相手に3頭のGI馬を産みましたが、相手にした種牡馬が同じであるかを問わず、 複数のGI馬を産むこと自体が尋常ではなく、3頭も産むような牝祖を持つ母系は目が離せないということです。

Jウェイヴェルアベニューの2024

11番手(2億4千万円)のこの馬(父サートゥルナーリア)は、1歳セッションの落札額2億円以上では唯一の牝馬。 母は こちら のカナダ産のGI馬で、半兄がグレナディアガーズです。

Kリリーズキャンドルの2024

12番手(2億3千万円)のこの馬はキズナ産駒。ようやくキズナ産駒が登場で、当歳セッションの方の2億円以上馬でもキズナ産駒は1頭のみであり、ちょっと意外でした。 こちら のとおり、フランス産の母はリスグラシューのいとこで、マルセルブサック賞の勝馬です。

(2025年7月16日記)

2025年セレクトセールの落札額2億円以上の馬の母系(その2)」に続く

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