吉沢譲治さんに会ってきました

血統の評論家でノンフィクション作家であった吉沢譲治さんと連絡が取れなくなったのは11年前。 なんとか連絡先がわかり、手紙を書いて、ご家族と連絡が取れて、大分の療養先を訪問したのは8年半前でした。 その後、現在に至るまで、吉沢さんとは不定期に電話ベースでやり取りしたり、拙著や興味深い記事のコピーをお送りしたりという交流を続けてきたのですが、 数日前、その8年半を経てまた会いに行きました。

前回は単身での訪問でしたが、今回は元朝日新聞の記者で競馬ライターの有吉正徳さん、元競馬ブックの記者でノンフィクション作家の和田章郎さんと3名での訪問です。

このご時世、老人ホームや介護施設は、感染症予防の観点から面会の時間やその方法は厳格に管理され、今回は30分、それもガラス越しでの面会でした。 吉沢さんとは電話ではしばしばその声は聴いていましたが、久々にお会いして見るその表情は、とても血色がよくて元気そうです。 車椅子での生活で、不自由はかなりのものと思いますが、相変わらず明るく前向きであり、頭が下がる思いでした。

吉沢さんと私とのお付き合いは、「著書をいくつも読ませて頂きましたが、優れた競走馬が突然出現することを安直に『突然変異』に帰結してしまい、 この言葉を多用してしまっているような気がします」と差し出がましい手紙を出版社経由で出したことが始まりです。身の程知らずの失礼な話でした。

その後私は、いまとなっては非常に恥ずかしい話ですが、こちら に書いたように、 Sadler's Wells と El Prado の親仔関係を疑ったことがありました。 その時、この話の相談相手として、有吉さんの計らいで新橋の喫茶店でお会いしたのが吉沢さんとの初対面でした。 12年前のことであり、その時にあらためて頂戴したメールが以下です。

「あのお手紙に書かれていた『突然変異』の多用については、痛いところを突かれた感じで、ハッといたしました。おっしゃるとおりです。 出版社側から一般読者に対して『わかりやすさ』を求められるので、ついつい『突然変異』を用いてスルーしてきたのですが、今後は気をつけたいと思います。 ご指摘、本当にありがとうございました」

また、そのメールには、過去には師弟関係であった山野浩一さんとのディープで複雑なご関係も色々と書かれていたことも懐かしく思い出します。 そのおふたりとも、JRA賞馬事文化賞受賞者であることもあらためて思い出しました。

拙稿でも吉沢さんの言説は多々引用させていただきました。例えば こちら は、 拙著『競馬サイエンス 生物学・遺伝学に基づくサラブレッドの血統入門』(星海社新書)からの抜粋です。

吉沢さん、近いうちまたお顔を見に伺いますよ。

(2025年11月22日記)

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