『サラブレッドの血筋』の第4版を製本発注しました

昨日、拙著『サラブレッドの血筋』の第4版の原稿を製本会社に入稿しました。 途中一度、サンプルをチェックして、問題がないようであれば、来月上旬にはいくつもの段ボールが我が家に届くと思います。 ということで、狭い我が家の中のスペースづくりにこれから取り掛かります。廊下も倉庫と化すので、家族の苦い顔が思い浮かび……。

拙著の第3版を発行したのは4年半前。継続的に2、3年ごとに発行していこう……とは思ってはきたものの、新たな内容を考案したり、 これに基づくデータ収集はそこそこの時間と気力と要し、気づけばまたこのような時間が流れていたというのが実際です。 途中、「次版はいつなのですか?」というメールを頂戴することもあり、当方に関心を持ってくださっていることには本当に有難いと思いましたし、 膨大なデータ整理がしんどいと思った時など、そのようなお言葉は確かな励みとなりました。

内容は前半が我が論述、後半が母系樹形図であり、論述は以下の構成としました。今年2月に書いた こちら からは若干変更しています。

 第1章 母系の意義
 第2章 近親交配と遺伝的多様性
 第3章 遺伝の話あれこれ
 第4章 今後の生産界

また、サブタイトルも前版と同じ「偉大なる母の力」としました。その偉大さを繰り返し力説したいと思ったことから、敢えて変更する必要もないと思ったためです。

以前、拙著を手に取った方が、拙著を「論文」と表現したことがあるのですが、手前味噌ながら、確かにその内容は十分に学術誌に論文として投稿できる内容も含んでいると思います。 ところで、こちら の一番最後に書いたことと関連しますが、 論文をどれだけ投稿したかを内輪で競うような「井の中の蛙マインド」が競馬サークルに隣接する学術界に蔓延(はびこ)っていないだろうかと思うことがしばしばあります。 学会発表や論文投稿が最終目的で、つまりアカデミア内の単なる「相互賞賛」が目的と化し、その科学的知見を大衆に浸透させる「サイエンスコミュニケーション」 のマインドが抜け落ちている科学者は少なくないのではないかということです。 2年半前に こちら を書きましたが、このあたりの話の続編はまた別の機会に書こうと思っています。

ご存じのとおり、拙著は独力で作成しています(製本は印刷会社にお願しているのでは? などという重箱の隅はつつかないでね)。 挿入する表の配置を含めたレイアウトも全て自分で考えています。 外部の校正も校閲も受けていなく、入稿しようかと思った原稿を読み返すと、新たな要修正(要加筆)箇所が見つかる……という繰り返しで、 それも初歩的な誤植だったりするのです。よって、最終的な製本発注も当初の予定より遅れました。 2年前に出版社(星海社)より上梓した『競馬サイエンス 生物学・遺伝学に基づくサラブレッドの血統入門』 の原稿に対する校正者の指摘事項をいまあらためて思い出したのですが、校正者自身が精通していない「競馬」および「遺伝」という分野でさえ、 適確な指摘をくださったことにはあらためて凄いなと思いました。本当に頭が下がる思いです。

ということで、段ボールで届いた完成版をパラパラとめくった際に「あっ!」と要修正箇所も見つかるかもですが、 これが自費出版本の「味」だと大目に見ていただければ嬉しいです。その際は、その要訂正箇所を本サイトに随時掲載していきます。

拙著のメインは今世紀生まれの世界のGI馬を網羅した母系樹形図です。こちら の最後にも書きましたが、 第4版からは字のサイズを小さくしました。樹形図の枝の分断箇所をできる限り少なくしながら、できる限り余白部分をつくらないように、 そして、できる限りページ数を増やさないようにレイアウトを組むのがテクニックです。 周囲にあまりGI馬が出ていない異系の母系から新たなGI馬が出現した場合など、その枝を新たに延々と加筆するため、 レイアウトの大がかりな修正が必要となることがあります。つまり、1頭のGI馬を加筆するために、数時間がかりの作業となることもままあるのです。 これ、かなりな労力の作業であり、つくづく好きでなければやっていけないと思うと同時に、好きでもめげそうになることが何度かありました。

こちら はオルフェーヴルがいる 8-c 族の樹形図ですが、枝葉のどこを分断するかを試行錯誤した結果、うまい具合に3ページに収まった例です。 また こちら はソダシとママコチャの 2-w 族ですが、ご覧のとおり閑散とした「一本杉」です。 このレイアウトはもうこれ以上いじりようがなく、このページの下半分はメモ帳代わりにしてもらいましょうか(笑)。 こちら にも書いたように、メイケイエールさんも枝葉を伸ばしてくださいな!

拙著第4版の値段は、本刷り前のサンプルを受領後にそれを眺めながら、数年かけた我が作業の対価を一切妥協せずに上乗せしたうえで、決めるつもりです。

そして、こちら にも書いたとおり、第4版からは和文版と英文版は分冊発行するため、これから我が和文原稿の翻訳を始めます。 アイルランドの生産者か馬主とおぼしき方からは、数冊買うからと(催促の??)メールをすでに2回も頂戴しており、これまた有難い話であり、ネジを巻いていきます。

(2025年9月20日記)

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